出産の痛みを緩和する!無痛分娩の仕組みとは

妊娠中のプレママさん達はこれから経験する出産に対する喜びや不安を感じているかもしれません。「痛みに弱いから」「1人目を自然分娩で経験したから」という理由で無痛分娩を検討されている方もいらっしゃることでしょう。とはいえ、どんなお産を選ぶか決めるのは簡単なことではありません。

そこで、今回は無痛分娩を決断する上で必要な判断材料となる「無痛分娩の仕組み」をQ&A形式でご紹介いたします。無痛分娩のメリット・デメリットもご紹介しますので、是非参考にしてみてくださいね。

1、無痛分娩の仕組みQ&A

無痛分娩という言葉を知っている方は多いと思いますが、その詳細についてご存知の方は少ないかもしれません。どんな方法で麻酔をするの?本当に痛くないの?赤ちゃんへの影響は?様々な疑問をQ&A形式でご紹介したいと思います。

この記事では、無痛分娩の代表的な方法である「硬膜外鎮痛」を例にご紹介します。

①どうしてお産は痛いの?

出典:日本産科麻酔学会

無痛分娩の仕組みをご紹介する前に、お産の仕組みについて少しだけご紹介したいと思います。どうしてお産は痛いのでしょうか?

陣痛で子宮が収縮し、赤ちゃんが出てくると膣や骨盤、外陰部などがグッと押し広げられます。こうしてお腹が伸びたり縮んだり、引き伸ばされたりすることによる刺激は、子宮周辺にある神経を介して背骨の中の神経(脊髄)に伝わります。この刺激は更に脊髄を上って脳に伝わり、そこで痛みとして感じるのです。

②無痛分娩はどんなタイミングで始めるの?

妊婦さんの状態や産院、医師の方針にもよりますが、陣痛が始まって妊婦さんが痛みを止めて欲しいと感じ、産科医の許可が得られた時点で硬膜外麻酔を開始します。

麻酔を始めると、20~30分で徐々に鎮痛効果が現れます。効果が十分に現れると、お腹が張っているのに痛みを感じていないことに気付きます。

③無痛分娩はどうやって始めるの?

出典:日本産科麻酔学会

まず背中に薬を注入するための細い管を入れるために、ベッドに横向きに寝るか座って、背中を丸めた姿勢で行います。

出典:日本産科麻酔学会

最初にとても細い針を使って皮膚に痛み止めを打ちます。そして、管を入れるためのやや太い針を刺します。この時押される感じはありますが、皮膚の痛み止めが効いているので、痛みは感じません。針の先を硬膜外腔に進めたら、その針の中を通して管を硬膜外腔に入れます。その後針だけを抜くと柔らかい管だけが体に残ります。針は体の中に残しておくわけではないので、背中を下にしたり体を動かしても大丈夫です。

硬膜外に管を入れるのは数分から10分程度で終わります。

④硬膜外麻酔が入ったあとはどうなるの?

硬膜外腔に入った局所麻酔薬は、子宮、膣、外陰部、会陰部の痛みの神経をブロックします。また、同時に足の感覚の神経や足を動かす神経も鈍くするため、足のしびれを感じたり、足の力が弱くなったりします。そのため、硬膜外無痛分娩が始まったら歩行せず、ベッドの上で過ごすところが多いようです。

分娩が進むにつれて痛みが強くなるようなら、注入ポンプに繋がっているボタンを妊婦さん自身が押すことで、麻酔薬が追加注入されます。ボタンは何回押しても安全なようにセットされているので、少し痛みが強くなってきたタイミングでボタンを押すと、最後まで安定して痛みをコントロールすることができます。

⑥麻酔が効かないこともある?

硬膜外麻酔が正しい位置に入っていない時、効きにくかったり、効かないことがあるようです。麻酔薬の濃度や投与量、麻酔を開始するタイミングなどは産院によって様々、それによって無痛の度合いは変わってきます。また、痛みの感じ方も個人差があるので、人によっては「麻酔の効果が十分ではなかった」と感じることもあるかもしれません。

⑦赤ちゃんへの影響は?

硬膜外麻酔をすることにより、赤ちゃんに麻酔薬の影響が出ることはないと言われています。痛みによるストレスがないだけでなく、麻酔による子宮の血流が増加するため、赤ちゃんへの血流も増えます。それにより、酸素が多く取り入れられるので、むしろ良い影響があると考えられています。

⑧産んだ気がしないのでは?

無痛だと産んだ気がしないのでは?というイメージがあるようですが、無痛分娩は下半身の痛みだけを遮断する局所麻酔のため、陣痛中はお腹がぎゅっと締め付けられるような感覚や赤ちゃんが産道を移動してくる感覚もあり、息むことも可能です。

痛みがない分、「赤ちゃんが下りてくる感覚をリアルに感じられた」という人もいるようです。

⑨分娩後は?

分娩後は硬膜外腔への薬の注入を止めます。鎮痛効果は徐々に弱くなります。硬膜外腔に入れた管は、鎮痛効果を必要としなければ抜くことが多いようです。麻酔の効果は薬をやめた数時間後には切れてしまいます。

⑩無痛分娩の費用は?

無痛分娩の費用は保険適用外のため、妊婦さんご自身が負担しなければなりません。産院によって費用は大きく変わりますが、2004年日本産科麻酔学会が会員の所属する分娩施設を対象に調査を行ったところ、個人施設では0~5万円、一般総合病院では3~10万円、大学病院では1~16万円でした。

2、無痛分娩の割合

2007年度「厚生労働省科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業」が行った調査の結果、日本全国の硬膜外無痛分娩率は全分娩の2.6%でした。

出典:育児GO!

こちらの表は日本産科麻酔学会がまとめた資料をグラフ化したもので、世界各国の無痛分娩の割合を比較したものです。

無痛分娩がポピュラーなアメリカでは61%(2008年調査)、フランスでは80%(2010年調査)、ノルウェーでは26%(2006年調査)、ドイツでは18%(2002-3年)と欧米の中でも

国により状況は違うことが分かります。

日本において、無痛分娩が自然分娩ほど普及しない理由のひとつとして「お腹を痛めて産むべき」という考えが根強く、無痛分娩に否定的な人が多いようです。

また、麻酔科医の不足や医療事故のリスクが指摘されていることも理由のひとつにあります。2017年無痛分娩中に妊婦が死亡し、大きく報道されたことは記憶に新しいのではないでしょうか。無痛分娩に対するリスクから、無痛分娩を躊躇する人が多いのかもしれません。

3、無痛分娩のメリット

①リラックスして出産に臨める

無痛分娩の最大のメリットは「痛みを抑えられる」ということ。全く痛みを感じないわけではなく、個人差もありますが、無痛分娩経験者によると、「ちょっと重い生理痛くらい」「自然分娩の1/10くらいの痛さ」とのこと。出産はまるで鼻からスイカを出すようなものと言われており、大変な痛みを伴うものです。出産に対する恐怖心や陣痛に伴う痛みといったストレスを取り除くことで、リラックスして出産に臨むことができるのは安心ですよね。

硬膜外麻酔は下半身だけへの痛み止めなので、妊婦さんの意識がなくなることはなく、出産時に赤ちゃんと対面することもできます。

②産後の回復が早い

陣痛で長い間眠れなかったり、痛みに耐えながら何度も息んで体力を消耗することがない為、産後の回復が早いと言われています。出産後の育児に体力温存できることも無痛分娩のメリットです。

出産にともなう妊婦さんの負担が軽くなることで、子育ての意欲も強まるかもしれません。

③子宮口が開きやすくなる

麻酔により身体の緊張が緩むことで、子宮口が開きやすくなると言われています。これにより、お産がスムーズにいきやすいようです。

④帝王切開への移行がスムーズ

緊急帝王切開になったとき、すでに硬膜外腔にチューブが入っており、麻酔薬を替えるだけなので、手術に移行し易いメリットもあります。緊急帝王切開時は、自然分娩よりも20分程、準備時間を短縮できると言われています。

4、 無痛分娩のデメリット

無痛分娩の仕組みや前項(3.無痛分娩のメリット)でご紹介しました通り、無痛分娩にはメリットが沢山あることが分かりました。一方、デメリットがあることも忘れてはいけません。

①お産が長くなる

硬膜外麻酔によって、陣痛や息みの感覚が薄れ、お産が長引く可能性があります。「陣痛がきても、息むタイミングが分からない」という妊婦さんもいるようです。自然分娩と比べてお産が少し長くなることによる赤ちゃんへの影響はないと言われています。

ただし、場合によっては麻酔を中止する可能性があることもあることを知っておく必要があります。

②計画分娩になる

計画分娩とは、分娩の日取りをあらかじめ決めて、自然の陣痛を待たずに、薬を使ったり、処置をして陣痛を起こします。現在の日本では、365日24時間体制で硬膜外無痛分娩に対応できる施設は多くありません。限られた曜日や時間にしかできない病院もあるため、無痛分娩を選択した場合は、計画分娩になる可能性があることを知っておきましょう。

③吸引分娩・子分娩の可能性が高まる

海外の研究によると、自然分娩と比べて、吸引分娩*や鉗子分娩**の頻度が高まることが報告されています。

*吸入分娩とは

シリコンや金属製のカップを赤ちゃんの頭に付けて、吸引圧をかけることによって赤ちゃんを引き出す分娩方法のこと。

**鉗子分娩とは

鉗子という金属の器具を赤ちゃんの頭にかけ、引き出す分娩方法のこと。

④麻酔による副作用等

硬膜外麻酔の安全性は確立されているものの、どんな医療行為にもリスクがあることを知っておかなければなりません。硬膜外麻酔による副作用として、軽い血圧低下、体温の上昇、からだのかゆみ、頭痛、背中の注射した場所にしばらく痛みが残ることなどがあります。

また稀な合併症として、硬膜外カテーテルの先端が硬膜の更に奥にあるくも膜下腔に入ってしまい、麻酔が上半身まで広がることで、呼吸が苦しくなる、意識が遠のく、足に力が入らなくなるといった症状が出ることがあります。

さらに、硬膜外カテーテルの先端が血管の中に入ってしまった場合、舌や唇がしびれたり、痙攣をおこすことがあります。また、カテーテルを抜いた後に一時的に硬膜に孔ができることで、強い頭痛が続くことがあります。

万が一の時にも慌てないために、事前にリスクを知っておくことが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は無痛分娩の仕組みについてご紹介しました。

無痛分娩にはメリットはもちろん、デメリットもあることを十分に理解した上で、検討する必要があります。また、無痛分娩を選択する上で最も大切なのが、病院選びです。母子の状態を集中管理できるだけの体制が整えられていることと、確かな技術力のある信頼できる病院を選ぶことです。

今回の記事が皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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